Obanazawa
天台宗 弘誓山 養泉寺
尾花沢市内にある6つの札所のうち、市街地にあるのはここだけである。観音堂のある養泉寺は、俳聖松尾芭蕉が滞在したところで有名。
昔、尾花沢一帯は雑草が生いしげり、地上には光がとどかない有様であった。そのため、人や家畜に害を加える毒虫がいたる所に巣を作り、旅行く人を悩ませていた。ちょうどその頃、この地方をまわっていた慈覚大師が、自分の彫刻した観音像をまつり、災厄消除悪虫退散を祈願した。毒虫はたちまち絶滅し、そのあと虫の害を受ける人がいなくなった。大師が鎮守仏を安置した話を聞き、遠くから参詣者が日を追って多くなった。
別当の養泉寺は、東叡山寛永寺の直系の寺で、維新前までは相当の収入もあり、たいへん格式の高い寺であったが、維新の改革で田畑が没収されたため、収入も格式も衰え、一時は観音の堂守のようになってしまった。観音堂は、北坂下の田んぼの所にあったのを元和元年現在のところに移したということだが、どういう理由で移したのか、時の住職は誰だったのかなど記録がないのでわからない。
明治二十八年六月二十日火事にあい、観音堂は焼けたが、本尊は別当が持ち出しため無事であった。尊像は暫時、仮堂に移されたが、明治三十年七月再建され、盛大な遷座式典が行われた。現在のお堂がそれである。